【育児書リビュー】子どもへのまなざし 佐々木 正美著(2011年)

“98年の刊行以来、多大な反響のある『子どもへのまなざし』シリーズの完結編。今回は、子どもの虐待やひきこもりなどが増えている現代社会のなか、子どもにどう接していけばいいのか考えます。また、後半では、近年よく耳にする「発達障害」についても詳しく取り上げました。障害のあるなしにかかわらず、お互いに助け合い共鳴し合って生きていきたい。そんな思いがあふれた本書は、育児書であると同時に、人生導きの書でもあります。”

Miniko的参考になった度 ★★★★☆

子育本を読み漁り始める前に読んだ本で、エリクソンのライフサイクル仮説も知らなかったので衝撃を受けました。

「母親が一番」「子どもをいつだって中心に考えて」といった、やや現代に合わない価値観がベースにあるように見受けられ、初めて出産して乳児を抱えた母親としては肩の荷が重く感じたりもしました。

ただ、子供の自己肯定感が大切(同書では、エリクソンのライフサイクル理論に基づき、「基本的信頼」と言っています)であることを分かりやすく説明してくれたり、以下のライフサイクル仮説を紹介してくれたり、子育ての土台の考え方を紹介してくれる本でした。

子育てや声掛けのハウツー本ではないですが、私が児童心理学に興味を持ち、保育士の勉強を始めたきっかけになりました。

目次

エリクソンのライフサイクル仮説

アメリカの発達心理学者エリクソンは、一生は「乳児期」「幼児期」「児童期」「学童期」「青年期」「成人期」「壮年期」「高齢期」という8つの段階に分類され、それぞれの発達段階で習得しておくべき課題があり、生涯発達は続く、とされます。かならずしも年齢で自動的に段階を繰り上がるわけではなく、ひとつの発達段階を十分にクリアしてから次に行く、という進み方とされます。発達課題を提唱したのはエリクソンが最初ではない(Wikipediaによると)ようですが、彼の理論が、今日本の幼児教育の世界で最も有名だと思います。

以下、同書に出てきたライフサイクルの説明をMiniko的に要約してみました。

●乳児の時期
基本的信頼が育つ時期。自分が望んだ通りに愛してもらえるという体験が大切。「望んだ通りにしてくれた人」を信じ、自分はここに存在できるという自信につなげる。

●幼児期
自律性を育てる時期。自分の感情や衝動をコントロールする力を育む。
印象的だったのは、以下の言葉。こんな忍耐力がほしいなあ、という意味を込めて。

「自立というのは自分で決めるのであって、人から決められるものではない。いつからできるようになるかは、自分で決めていいですよ、ゆっくり待ってあげるから、という子育てが望ましい。」
子供はなんど言われようと、できないものはできない。何度でも言ってあげる、何度でも手伝ってあげる

●児童期
遊びを通して、子供の自主性を育てる時期。

●思春期
自分という人間は何者なのか、という自覚を育てる時期。価値観を共有できる友達を持ったり、自分を客観的に見つめることを通じて、アイデンティティを確立していく。

●成人期
人生を賭けてもいい、というほどの活動に打ち込む時期。結婚や仕事など。

●壮年期
自分の経験や知識を、次の世代に伝え、教えていく方向へ意識が向いていく時期。

●老年期
自分の人生はこれで良かったと思う、総括期。

現代に合うライフサイクルとは。

これを見ると、自分は今成人期にいて、打ち込めることといえば、今は子供と過ごしつつ、人生をジャグリングすることかなと思います。

職場の上司や中年を過ぎたコメンテーターなどが、「これからは若い世代に自分の経験を伝えていきたい」などと発言するのを思い返して、あれは彼らの個人的な意気込みではなくて、そのような壮年期の発達段階に入った人々の傾向なのかなと合点がいきます。

ただ、時代は変化しています。

グローバル化、性や家族観の多様化、ライフシフトとしてキャリアも多様化する中で、この理論がどこまでこれからの社会で通用するか分からないよね、とも思います。人生を見通した参考地図としてありがたく受け止めて、自分らしく生きたいですね。

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