リセットゲーム

woman writing on a whiteboard

私は、よく「リセットゲーム」をした。

自分が今持っているものをリストアップして、人生計画をいったん白紙に戻し、自分に改めて問いかける。

「さあ、これからあなたはどう生きたいの」

大学院の留年が決まった時も、そうした。

「あなたは、健康な25歳の女性。ロースクール最終学年在籍(留年)、社会経験なし。借金500万円、貯金0円、頼れる家族はなくて、帰る家もない。さあ、あなたはここからどう生きたいの。」

すると自分はこう答えた、「とりあえず、ここまで来たら、なんとか頑張って大学院を卒業したい」

1科目の単位を落としたので、その単位を取る学期以外は休学する。その間にバイトして、生活費と学費を貯める。司法試験は諦めよう。そして大学院を卒業したら、どこかに就職し、生活を維持する。大それた夢を持たなければ、ひとりで生きていけるはず。

そして、私はその通りに、大学院を卒業し、どこかに就職した。とても不本意な仕事だったけど、自活する道を開いた。


親から『呪いの手紙』を受け取っては、洋服掛けにかけてあった首吊り用の紐を眺めて泣いていた20代後半も、私は自分にこう聞いた。

「あなたは29歳。社会人3年、でも一般企業で働くスキルは全然身についていない。借金は400万円、貯金は200万円。いちおう健康なのに、毎日泣いている。これからどうやって生きていこうか?」

そうすると自分が答えた。

「35歳まで、とりあえず頑張ろうと思う。35歳まで東京で仕事を頑張りながら勉強もする。そしてできるだけお金をためよう。そのあと仕事を辞め、東京を離れて、だれも知らないどこか遠くの山奥へ行って、安い土地を買い、自分で家を建てて生活をしよう。食費のためにコンビニかどこかで月に数万円だけバイトをできればいいから。」

補足すると、その時「Bライフ10万円で家を建てて生活する | 高村 友也著という本にはまっていた。その著者は山梨県の土地を100万円で買い、資材10万円で自分の家をセルフビルドしていた。

「その生活をしてなおも、自分の人生に今のような苦しみしかないならば、もうその時には、自分の人生を終わらせよう。35歳まで、とりあえずがんばって生きてみよう。」

私は昔から35歳でこの世を去るのが美しいと思っていた。なぜなら、『ベルサイユのばら』の主人公オスカルも35歳で死んだのだから。


35歳になったとき、私は結婚していて、転職していて、東京でやりたいと思っていた仕事をして、貯金は500万円あった。

人生は捨てたものではないな、と思えた。昔思い描いてた「最低ライン」から、ずいぶん遠くへ来た、と思った。

その後娘が生まれて人生が激変した今も、少し鬱々としたときには、私はリセットゲームをする。

「あなたは今●際、いちおう健康で、●●を持っている。貯金はこのくらいあって、守るべき家族は●●と●●。さあ、あなたは自分の人生をどのように使いたいの?」

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